平成16(2004)年2月、大阪府寝屋川市東部地域のN自治会の班長会でのⅠ女性班長さんの発言、「杉並病のことみなさん御存知ですか?」から事がはじまった。寝屋川に多い竹林を開発した、戸建ての住宅地の自治会公民館で初めて耳にした言葉だった。参加者のなかには「公民館から四,五百メートル離れた市街化調整地域の田畑に、建築資材がつまれている。」と告げる方もいた。
当時、私は自治会長をしていた。2月初めに、廃プラリサイクル施設の建設についての都市計画審議会が行われ、「市街化調整地域には、廃棄物施設は基本的につくられない。」と発言した大学教授の委員もいた。しかし大阪府から出席した職員が、この計画は大阪府の「エコエリア構想」にされていることを説明、反対する市会議員もいる中で承認された。私はこの時点で、廃プラのリサイクルの実態をほとんど知らなかった。
そこで、科学者会議大阪支部で行っていた「有害化学物質研究会」のメンバーで、プラスチックの分子構造を長年研究して来られた樋口泰一先生に学習会の講師をお願いしたところ、快諾いただけた。廃プラ施設建設に疑問をもっている近隣の自治会の方たちも学習会に参加し、公民館いっぱいの三、四十名ほど(多くは女性)が集まって学習会が行われた。
樋口先生のお話は、私たち住民にとって衝撃的だった。樋口先生は「プラスチックの開発の研究は長年したけれど、ゴミになったプラスチックがどうなっているのか、廃プラの処理は何が問題になるのか考えたこともなかった。」とまず言われた。そしてプラスチックの専門家として「プラスチックは石油から作られること。石油から製造された、小さな分子の集まり(単量体=モノマー)を原料に化学反応によって数千、数万の単量体を結合し(重合と言われる)固体のプラスチックを製造すること。この物質は高分子化合物とも多量体=ポリマーとも言われるプラスチックであること。」「プラスチックは、長い鎖のような単量体分子のつながりであるから、熱や機械的力によって結合部分が切れやすいプラスチックが考えられること。」「杉並病は集められたプラスチックが圧縮・梱包などの際加えられた摩擦、折り曲げ、発熱などにより高分子の固形物が一部分解され低分子の揮発性有機化合物(VOC=Volatile Organic Compounds)になりえること。」「VOCのなかには人体に有害な物質がありうること。」をじゅんじゅんと話された。
この情報は、近隣自治会に瞬く間に伝わり、廃プラ工場建設について説明を求める要望書が八自治会長連名で、その年の3月2日に市長あてに提出された。